皆さま、こんにちは。11月は陰暦で「霜月」と言われます。
諸説があるようですが「霜降り月」「霜が降り始める月」という説にうなずけように、
最近は気温がぐっと下がり、その気温とともに紅葉の深みが増すようです。
赤や黄色に染まった山々を遠くから眺めるのも、また素敵ですね。
先月には言葉遣いについてお送りしましたが、その丁寧な言葉遣いをしながらも、
患者様に納得してもらえるような説明の仕方を今月はお伝え致します。
『医療スタッフに最も期待することは何ですか?』と私が色々な医療機関で患者様満足度アンケートを
とった結果、ずばり昨今の患者様が期待されることは『わかりやすい説明』が一番に上がってきています。
医療機関で働く私たちにとって、受診の仕方、治療の流れ、検査や手術を受けるに
あたっての諸注意、場所の案内など日常業務の中で「説明」するという状況が非常に
多いのではないのではないでしょうか。
そしてその"説明"が"わかりやすい"ということは病院全体の信頼性さえ左右するといえます。
物事の説明のしかたの基本をマスターすることで、よりわかりやすい説明を目指していきましょう。
私が「説明力向上研修」をご指導する時に、まずしていただくことが「私たちの病院までの場所説明」です。
それは場所案内とは「説明力」を身に付けるための基本だと思うからなのです。
以下の地図はあるクリニックまでの地図です。地図上の「★Aクリニック」をあなたの勤務するクリニックと
想定すると、どのようにご案内しますか?
スタッフ同士で"患者様役"と"スタッフ役"に分かれて試してみても良いでしょう。
患者様役がお電話で「そちらの病院への行き方を教えてください」とスタッフ役の方にたずねてください。
(この時、患者様役は電話でたずねるという状況にして地図は見ずに、スタッフ役の説明にだけ耳を傾けます。)
そしてスタッフ役の方は、この地図を見ながら、相手に説明してください。
患者様役の方は説明を聞いて、Aクリニックにスムーズ到着できましたでしょうか。
それでは、場所説明を通じて「わかりやすい説明」の基本ステップを解説していきましょう。
以下の4つのステップを踏むことにより、相手にとってぐっとわかりやすくなります。
ステップ1:相手中心
ステップ2:知っていることから、知らないことへ
ステップ3:全体像から詳細へ
ステップ4:理解と安心の確認
これだけでは、いまひとつピンとこないので、具体的に1つ1つのステップごとに例話をあげていきます。
《ステップ1:相手中心》
相手中心とは、まず相手の知りたいことや、どこから来るのか(出発点・起点)を知ろうとすることです。
「どちらからいらっしゃいますか?」「交通機関は何をお使いですか? 」と声がけします。
例)JRなら→大阪駅が最寄り駅です。/地下鉄なら→梅田駅など
★あなたの病院の最寄駅(JRか私鉄、バス停)はいくつありますか?
ご自身の通勤駅からの説明しかできないのではなく、
相手がどこからいらっしゃっても説明できるように、これからスタッフ全員でまとめておくのも良いでしょう。
《ステップ2:知っていることから、知らないことへ》
人は知らないことや、聞きなれないことを聞くとその時点で頭が混乱し、
聴こうとする意欲さえ減少させてしまいます。
それゆえに、相手が知っていることを把握し、そしてどの程度知っているかを
確認することが大切です。
「それなら知っている!」という相手の意欲を引き出しながら、
知らないことへと導いて行くわけです。
場所説明の場合は、相手が知っている目印になるようなものを聞き出します。
全く知らない場合には、できるだけ目立つもの、公共の建物などを提示し、
お互いの共通の起点として、知ってもらいます。
例)JR大阪駅近くにある、〇〇をご存知ですか?
★あなたの病院の近辺に、目印になるようなものは何があるか、
通勤途中などに注意して覚えておきましょう。
相手が何を、どれくらい知っていること知れば、
説明にかかる時間短縮にも役立ちます。
《ステップ3:全体像から詳細へ》
このステップで初めて具体的な内容を説明していきますが、細かい詳細を話し始めるまえに
一番大切なことは、全体像を先にお伝えすることです。
全体像とは、説明する内容の「ポイント数」や「説明にかかる時間」などです。
例)ポイントは3つありまして、5分ほどお時間がかかりますがよろしいでしょうか?
この全体像を伝えることにより、相手は「〇つ聞けばOKなんだ」と情報を整理していく
心構えができます。このポイントの数は3~4つ以内にまとめておくほうが良いでしょう。
あまりたくさんあると、その時点で「そんなにたくさん覚えられない」と思われてしまいます。
「数分で済むことなら覚えれる」という安心を与えると同時に、忙しい昨今の患者様の
お時間を大切にするためにも、長々と説明するより、短時間にわかりやすくお話するほうが
良いでしょう。
例)先ほどの地図を使って説明しましょう。
<全体像>来ていただくまでの3つのポイントをご説明させていただきます。
<ポイント①>まず、駅を背にしていただくと(相手の視線と一致させます)。
右手に郵便局(目印①)がありますので、右手に見ながら
2つ目の信号まで直進してきていただきます。
<ポイント②>2つ目の信号の向かって左側にガソリンスタンド(目印②)がありますので、
それが見えたら右に曲がってください。
<ポイント③>そのまま50メールくらい進んでいただくと左にコンビニ(目印③)が
ありますので、そのコンビニを左手に曲がっていただくと10メートルほどに
わたくし共のクリニックがございます。
(クリニックの建物特徴や看板が見えますなどとお伝えしても良いですね)
最後に「〇〇駅から〇〇分でわたどもの病院へ着いていただけると思います。」
大体の目安の時間を言うことで、それ以上の時間がかかっている時点で迷っていることに
気づいてもらえます。
★ 1つ1つのポイントを説明する際に、さらに大切なことは「間(ま)」をあけることです。
1つのポイントを説明したら、相手が頭の中で聞いたことを整理する時間が必要だということを
心に留めておいてくだい。
「よろしいでしょうか」という疑問に対して、
もしも不安げな様子を感じ取ったならば、その時点で、別の言い方などで不安点を
解決することが可能になります。
《ステップ4:理解と安心の確認》
ステップ3ではポイントごとに『間』を取り、「ここまではよろしいでしょうか?」と
相手の理解をその都度確認してきました。
このステップ4では最後に、患者様の心理的不安をフォローするための
言葉がけをすることで、さらなる安心を与えることです。
例) 「全体を通じて、なにか疑問な点はございますでしょうか」
「もし、途中でお分かりにならなくなった場合は
ご遠慮なく、お電話ください。私〇〇と申します」
「どうぞお気をつけておいでください。」
どんなに素晴らしい医療技術を先生がお持ちでも、実際に病院に来ていただけないと治療はできません。
来ていただいてこそ、私たちの存在意義が発揮されるわけです。
特に場所を訊ねてくださる患者様は「未来の患者様」といえます。
治療を受けられる前であっても、わかりやすい場所説明ができることによって、
病院全体の良いイメージと信頼を与えることができます。
未来の患者様が安心して来院していただけるように、
わかりやすい場所案内を実践していきましょう。
そして、患者様から質問されることが多いことや、
日常的にあなたが説明しなくてはいけないことは、
今回のステップを応用して整理していただくと良いと思います。
16.11.01(火)村田 小百合 カテゴリ: