私たちが目指すもの 顧客とともに、常に『笑顔』と『成長』があること

ブログ

良書紹介(5)~院内コミュ二ケーション~

⑯野球-ポジション別.jpg今年の夏の高校野球選手権大会は、100回目記念

大会でしたね。

球児たちの憧れの舞台、甲子園で熱い試合が

繰り広げられ、最後まで諦めずに、炎天下で

戦い抜く選手たちの姿に声援を送った方が

多くいらしたでしょう。

この本を推薦する理由

あなたの病院における「コミュ二ケーションとチームワーク」は

うまくいっていますか?とお尋ねしたら、「ええ...スタッフ全員仲よくて

コミュ二ケーションいいですよ」「チームワークもまあまあ...問題はない

です」とおっしゃられるのではないかと思います。

①本 表紙.jpg今月は、将来に向けてさらに★★★私たちの病院の

患者様満足を高めていくために必要な

コミュ二ケーションのあり方について書かれた

「院内コミュニケーション」という本を

ご紹介していきます。

そこで、もう1つ訊かせてください。

あなたはご自身が働く病院の理念をご存知ですか?

"理念"ときくと少し堅苦しく感じるかもしれませんので、

「病院が目指す姿」と言い換えてもいいと思います。

「病院はじめ医療機関というのは、患者様を治療して差し上げることが

目的なので、治療することが理念なんじゃないでしょうか...。」と

お答えになるかもしれません。もちろんそれは正解です。

ちなみに、医療機関のホームページなどでよく目にする理念や

基本方針には、「地域に根ざした医療を提供する」「患者様の安全・安心

を目指す」というものに、加え「患者様の目線に立って、丁寧な説明を

心掛けます」など患者様とのコミュ二ケーションを重要視されている

ところも多く見受けられます。

このことからも今一度、私たちの病院の患者様に求められている

コミュ二ケーションとはどのようなものかを、この本とともに考える

機会にしたいと思います。

 

本の全体像(概略)

⑧ドクター.jpg病院やクリニックに期待することは、もちろん

先生方の高度な医療・治療サービスに変わりは

ないでしょうが、最近は、患者様が期待するもの

にコミュ二ケーションの比重が高まっている

ことも事実ではないでしょうか。

患者様は来院して受付する時、待合にいる時、

検査の時、診察時、説明を聞く時、会計時とすべての過程を通じて

満足を感じなければ、真の意味での患者満足を感じることはないのです。

そして、ほとんどの過程においてコミュニケーションが絡んできます。

例えば院長が「安心と優しい医院」を目指しているのならば、受付スタッ

フも、看護師もドクターさえも「患者様が安心と優しさを実感できる

応対」をしなければ、本当の意味での患者満足は向上できません。

そして、その安心と優しさを効果的に伝えることができるのが

「安心を与える説明」であったり、「やさしい言葉がけ」などの

コミュ二ケーションだと言えます。

スタッフ全員が医院の目指す姿(=理念)とそれぞれの専門業務を

常に結びつける役割が「院内コミュ二ケーション」の一番の狙いです。

⑰矢印-運ぶ人.jpgそして、院内コミュ二ケーションのもうひとつの

役割としては「患者様の情報の共有」が挙げられ

ます。チーム医療の推進が求められる中、

医療機関は専門性の高いスタッフの集団である

ため、なかなかそのチーム医療の実現が難しいと言われます。

患者様が知りたいと思う情報、安心できる情報を的確に伝わるように

コミュ二ケーションをとっていくために、まずは患者様に関わる情報を

どのように組織内で共有していくのかが必要不可欠なのです。

患者様から頼まれたことを医師に伝え忘れたり、医師から口頭指示された

ことを記入し忘れたり、一見「個人のうっかりミス」と思われがちです

が、どこの組織でも起こりうる問題です。

つまり誰もが起こす可能性があるコミュ二ケーションミスならば、

どのようにすれば、情報の漏れがなくなり、思い込みがなくなるのか

という解決の方法を当書では具体的に提示しています。

⑪Yes I can.jpgそしてコミュ二ケーションを通じて業務改善の

第1歩として始めてほしいことは、

「あとでしよう」とか「院長の指示がでてから

しよう」と考えるのではなく、「自分が患者様

だったらこうして欲しいと思う」というように

患者様目線で気づいたことは、まずは「自分自身から始める」という

意識を持つことです。

少し不安げな表情を見せた患者様や、何か質問したそうな方には、

「言わないのなら、まぁいいのかな?」と放っておくのではなく、

「何かお聞きになりたいことあれば、私が承ります」と積極的に笑顔で

ひと声がける行動を起こすことが院内コミュ二ケーションのスタートと

述べられています。

医療プロフェッショナルとして役立ててもらいたいポイント

⑦Clerk 顔なし.jpg笑顔でひと声がけは、すでにあなたの病院やクリニックでも実践されてい

るかもしれません。

ここで、1つ例話です。思いやりを目指す医院に勤める看護師Aさんは、

心配げな表情の患者様に「何か気がかりなことがおありですか?」と

声をかけると、「今月、手術を受けるが...いくらくらいになるのか、

高額になるのが心配だ」と正直に話してくださったとしましょう。

そうすると「高額医療費制度」があることから、看護師Aさんは

詳しくは受付で医療事務スタッフBさんから説明すると伝えました。

しかし、ここで伝達ミスという問題が発生したとします。

看護師Aさんはちゃんと伝えたのだけれど、事務スタッフBさんは

他の患者様の対応にことのほか時間を取られ、お待ちになっていた

患者様へ説明しようと思った時には、待ちきれずに帰られていました。

結局、その患者様は不安を抱えたままになってしまいました。

②コミュ放射状.jpg

一人一人のスタッフが日常のコミュ二ケーション

で気をつけるべきポイントはコミュ二ケーション

が上手く行かない時には、その原因となる情報の

流れを検証することが必要だと説きます。

情報がスムーズに流れない原因が分かれば業務自体を見直すことも

視野に入れていきます。

このような伝達ミスが起これば、看護師Aさんが「今後は気をつけてね」と

指摘し、医療事務Bさんが「はい、これからは、気をつけます」と

謝って一件落着ということもあるでしょう。

しかし、心の中では以下のような思いが解消されずに、

今ひとつすっきりしないのも本音です。

♥看護師Bさんの思い

⇒わたしはどんなに忙しくても、患者様からの頼まれごとを忘れることは

ないわ。プロ意識が欠如しているんじゃない?きちんと応対してくれない

と病院全体の評判を落とすことになるわ。

♥医療事務Bさんの思い

⇒確かに結果、説明できなかったことは私のミスかもしれないけど、

遊んでいた訳ではないし、先に対応していた患者様をあとに回す

わけにもいかないでしょう。

Bさんも私がすぐに対応できないのを見ていたのだから、

他の人に声を掛けるなり、自分で説明するなり、助けてくれても

良かったんじゃないの?「高額医療制度の説明」は事務スタッフじゃない

とできないわけでもないと思うけど。

⑩Team.jpgこの伝達ミスの原因を究明するのに

3つの視点があります。

それぞれに原因が明確になれば、

解決案も広がっていきます。

【問題の原因を究明する3つの視点】

1. 個人に起因する原因

     それぞれに専門業務をこなしている医療スタッフは、皆忙しい。

   すぐ対応できない場合は、「どれくらい時間がかかるのか?」と

   待ちいただく許可を患者様にお伝えしなかったのが最大の原因で

   す。そして、これはAさん、Bさん共にお互いをフォローする

   協力意識が希薄だったといえます。

2. 仕組みに起因する原因

  よくある質問には、説明を簡潔にできるマニュアルや資料が

  整備されていたのか。資料を先に読んでいただき、あとで補足説明

  するという方法もあるのではないか?

3. 組織に起因する原因

  すぐに対応できない患者様、お待たせする際の協力体制を組織として

  どのようにするのか決める必要がある。よくある質問には誰でも、

  わかりやすく説明できるように研修やマニュアルなどで周知徹底

  していくことは可能なのか?。

【改善策】

①    高額医療費に限らず、検査などに関するよくある質問への⑫Yes We can.jpg

対応マニュアルを整備し、皆が忙しい中、少しでも

余裕がある者が対応する協力体制を考える。

患者様をお待たせしない組織体制への第1歩。

②    一声がけは、患者満足を向上させるためにも

大切な応対ですが、その際に質問を受けた者が最終的に患者様が答えを

得られたのかという最終責任を負います。

自分が説明できないので、分かる人に代わってもらった際にも、

説明を受けたかどうか?とフォローして行く必要あります。

そのためにも頼まれた人は、その仕事が終われば依頼人に

「説明終わりましたよ」と報告をする必要があります。

お互いの報告・連絡・相談というコミュ二ケーションがあってこそ

スムーズに情報が流れます。

以下は眼科医院での研修時に参加者から院内コミュケーションについて

話し合われた実例です。

昨今、眼科医療技術の高度化により、白内障手術であれば数十分も

あれば終るそうです。

患者様は手術が迅速、安全に終ることを望まれるのは当然ですが、

それ以前により安心して手術を迎えたい、しかも術後の生活が

快適であってほしいと、治療前後の過程にも関心が高まっていることを

スタッフは気がついていました。

外来での診察や検査を通じて、ドクターが手術や術式の決定をされます。

手術や眼内レンズの説明には、先生自らされることもありますが、

しっかりと教育された専門スタッフが丁寧に解説することによって

忙しいドクターよりも質問もしやすく、信頼につなげたいと

全スタッフがその必要性に同意していました。

また、ご家族のご協力とご理解を得るための説明をすることも

多ので、個々の「専門技術や知識」だけでなく、全体を通じた高度な

「医療サービス」のためには院内コミュニケーションのあり方を

見直すためことになり、これからの勉強会のテーマが決まっていきました。

将来にわたり選ばれる医療機関になれるのかどうかの鍵を

コミュニケーションが握っていることを全員で認識した時間でした。

著者について

濱川 博招

1954年生まれ。関西大学法学部卒業。

経営コンサルティング会社ウィ・キャン代表。

医療機関において実際の医療現場で発生した膨大な数にのぼる事例研究を

通して、リスク回避のためのコミュニケーション等現場に即した事例を

紹介。 

島川久美子

立教大学大学院卒業MBA取得。2002年4月株式会社ウィ・キャン設立

(人材ビジネス・人材開発)、取締役に就任。

1998年から企業の立場、人材育成から病院での患者応対に関するコンサル

ティングを実施する。

18.08.01(水)村田 小百合 カテゴリ:

ブログ

最新の記事

カテゴリ別

月別