
紅葉が見ごろになったこの季節、「紅葉狩りの季節」と言われます。
平安時代から江戸時代、紅葉(もみじ)の枝を実際に折って
手に取って楽しんでいた名残だそうです。
赤や黄色に染まった山々を遠くから眺めるのも、また綺麗ですね。
この本を推薦する理由
私がアメリカ留学をしたいと思いながらも、
決断できなくてモヤモヤしていた頃がありました。
数人の友人は「後悔しない人生を送ったほうがいい。
だから留学するべきだ」とアドバイスをくれました。
その反対に身内はじめ、他の友人は、「10年近く勤めて、
やっと女性ながらも役職につけて、会社を辞めるのはもったいない。
なにより留学から帰ってきて再就職は(年齢が高くなっているから)
難しいよ」と心配してくれる声もありました。
実は留学することのメリットとデメリットは私自身が一番知っていたと思います。
その時に、一人の友人が「人生ってなんだろうね?」
「幸せってなんだろうね?」とまるで迷路に追い込むような
質問を投げかけてきました。
禅問答のようなやり取りを何度もしているうちにわたしの決心は固まって行きました。
最後にその友人が「ソクラテスとかプラトンという哲学者たちは、![]()
こんなふうに問答法を活用しながら、真理を追求していたんだろうね」と
笑いながら言いました。
アドラー心理学「嫌われる勇気」は、心理学という名前がついているのですが
『どうすれば幸福になれるのか』といったテーマを追求しているので、
むしろ"哲学"に近い印象さえ受けます。
現在に至るまでベストセラー上位に
選ばれているのかと考えると、現代社会では、無意識ながら、
自分で自分を縛り付けている数々のストッパー(制限)からの
開放を望んでいるではないかと私は思いました。
そのストッパーの一つは「人の目や評価を気にしすぎる」
ことなども挙げられます。
「誰かの期待を満たすために生きるのではない、
『自分が自分の人生を生きなければ誰が自分の人生を生きるのか』という
アドラーの思想に共感を覚えた人が多いのではないでしょうか。
そして、読み終えたあとには、潔く、しかも勇気をもって「自らの人生を生きる決心」を
後押しされた気がすることも支持されている理由だと感じています。
私自身が経験した「自分の人生なのに意志決定できない」
もどかしさへの鍵を見出したように、本書は"青年"と"哲人"との
哲学的な問答形式で書かれてあります。新たな一歩を踏み出したい人や、
物の見方を変えてみたい方にとって、
扉をひらくきかっけになればと思いご紹介を始めます。
本の全体像(概略)
哲学者と青年の対話形式によってその思想を解き明かしていきます。
アドラーの思想とは「人は変われる、世界はシンプルである、
誰でも幸福になれる」と説いているのですが、これだけではちょっとピンと来ないですよね。
つまりアドラーは
1. 世界がどうであるかではなく
→私たちの取り巻く環境や起ってしまった現象がどのようなものであっても
2. 主観的な世界に住んでいる青年(私たち)がその世界をどう見ているかと言う
ことから逃れることができない。
→自分の感じ方、考え方のみで、その事実や結果を捉えてしまっている
3. あなたに変わる勇気があれば、幸福になることができる。
→だから、あなたがその感じ方、考え方を変えようとするなら、
現実の解釈は変わってくるし、自分にとって最も幸せな考え方や判断ができ、
新しくものを見る視点を選択できたのならば、それが最善の幸せといえる。
という感じでしょう。
人は自分に起こっている現実に、これまでの経験則や、ときには刷り込まれた価値観や信念、
さらには思い込み(実際にはそうではないのに)、自分なりの解釈だけを真実であると捉えがちです。
それは無意識に身体に刻み込まれた「私の正しい判断」みたいなものですから、
変えることへ抵抗、不安などがつきまといます。
「私は変わります!」と言いながらも人は変化に躊躇することがあるのも事実でしょう。
特に自分が正しいと思ってきた考え方を大きく変えるということには恐怖さえ感じることも
無きにしもあらず。ほとんどの方は「人には嫌われたくない」と思う気持ちの方が強いと思われます。
「嫌われても良い」という価値観を受け入れるには、相当な勇気がいるということです。
その「嫌われても良い」という価値観を徐々に受け入れられるようにアドラーの教えを
哲人は青年に解いていきます。
では、5夜を通して話されていく内容を今月はその2つご紹介します。
【第1夜】「トラウマは存在しない」と明確に否定します。
今後の人生をどう生きるかについてなんの影響もない」
というのがアドラーが説く目的論だと哲人は語ります。
過去にたとえ不幸な事実があったにせよ、その原因に囚われるのではなく、
未来の目的に向かって歩む勇気を持つことが重要だということです。
これまでの心理学の考えを根底から覆すものであり、青年は受け入れがたいと思う反面、
一考に値する話だとも感じ、アドラーについてもっと学びたくなっていきます。
【第2夜】「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」とアドラーは断言しています。
自分が正しいと思うのなら、他の人がどんな意見であれ、
そこで完結すべきだと言います。「誤りを認めること」
「謝罪の言葉を述べること」「権力争いから降りること」は
いずれも「負け」ではないのです。
「勝ちVS負け」の競争意識を捨て去る勇気が大切だということでしょう。
アドラーは「仕事」「交友」「愛」の3つを目指すことにより、個人としての「自立」と、
社会における「協調」が達成されるのだと語っています。
しかしながら、この中で「愛」というのが一番難しいとも言います。
愛を実感する時とは「この人と一緒にいると、とても自由に振る舞える」と思える時です。
あなたは最近、この「愛」を実感することがありますか?
来月には第3夜~第5夜の詳細と
アドラー心理学から「医療プロフェッショナルとして役立ててもらいたいポイント」
をお送りします。
18.10.01(月)村田 小百合 カテゴリ:スタッフブログ